スティル・ライフ

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

を読んでいたら、何故だか池澤夏樹の「スティル・ライフ」が読みたくなった。


スティル・ライフ (中公文庫)

スティル・ライフ (中公文庫)


中央公論新人賞、芥川賞受賞作品。
スティル・ライフ」「ヤー・チャイカ」を収録。


池澤夏樹の書くモラトリアム(?)な理系男たちが、イラッとしながらも嫌いになれない、むしろ好きな感じなのが悔しい。そんな作品。

雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、僕を乗せたこの世界の方が上へ上へと昇っているのだ。静かに、滑らかに、着実に、世界は上昇を続けていた。僕はその世界の真中に置かれた岩に坐っていた。岩が昇り、海の全部が、厖大な量の水の全てが、波一つ立てずに昇り、それを見るぼくが昇っている。雪はその限りない上昇の 指標でしかなかった。

「SNOW」というタイトルの曲を聴いていた時にこの文章と出会ったのは、すてきな偶然だと思います。


雪の降る空を見上げるたびに、このことを思い出してしまう。


「ヤー・チャイカ」の、恐竜にエサをあげている女の子のエピソードも好き。