骨は珊瑚、眼は真珠

骨は珊瑚、眼は真珠 (文春文庫)

骨は珊瑚、眼は真珠 (文春文庫)

「眠る女」からはじまり「眠る人々」で終わる短編集。
「北への旅」という短編が特に好きです。物語の状況設定はごくありきたりのものなのに、物語の世界にどんどん引き込まれたことを思い出します。自分が真夏の通学途中のバスの中にいるのではなく、雪の降り積もる北の方に向かっているような錯覚がしたのがいまでも印象に残ってます。


池澤夏樹の文章にはよく料理や食物の描写が出てきます。それがいつでも美味しそうだから読んでて困ってしまうのです。
例えば、「眠る女」で出てくる夫のために主人公が毎日のように作る朝食。
トースト、玉子(スクランブルと目玉焼きとオムレツのローテーション)、ハムかベーコンかソーセージ。付け合わせは缶詰のアスパラガスかザワークラフト。クレソンとマッシュルームなどのサラダもついたりして、ホテルの朝食みたい。
「アステロイド観測隊」では、牢獄の中の主人公にホテルから食事が届く。(焼き加減まで好みにあうステーキ!)時にはビールやおつまみまででて宴会をひらいたり。
「北への旅」で、主人公が作るのを諦めた、エンダイヴとマッシュルームとケイパーのサラダ。たどり着いた場所で作ったローストチキン。
おいしそうな香りが漂ってきそうな文章に圧倒されます。