宮殿泥棒

宮殿泥棒 (文春文庫)

宮殿泥棒 (文春文庫)

「優等生の男の子たちは、イーサン・ケイニンによって自分の物語を得たのである」
訳者あとがきに出てくるこの一言が、とても印象的でした。
この短編集に収録されている「バートルシャーグとセレレム」は、型破りな「兄」の物語のように思えますが、あくまでも主人公は彼の弟である「僕」であり、「僕」が、かなうことのない天才である「兄」を乗り越えて成長する物語なのです。
成長して、変化していくことにより、何か取り返しのつかないものを失ってしまう。その瞬間を書いたものが「青春小説」と呼ばれるなら、この作品は、私が出会った中で最上級の「青春小説」だと思います。


映画になったら面白そうだなと思うのですが、いかがでしょうか。


※上記文章は、私が以前某メルマガに書いたものを加筆・修正したものです。